うしろの猫
駅のプラットホームで、わたしは早智子ちゃんとの別れを惜しんでいた。
早智子ちゃんは、涙で顔をくしゃくしゃにしている。
「早智子ちゃん。突然、来たのに泊めてくれてありがとうね」
「ううん、すごく楽しかった!冬休みも絶対また来てね」
早智子ちゃんの毎日は、本当に辛いものなのだろう。
そう思うと、わたしも泣けてきてしまいこのまま帰るのに後ろ髪ひかれる思いである。
わたしは、抱き合いながら泣いていた早智子ちゃんの表情が怯えたように変わっていくのに気づき、早智子ちゃんの視線を追ってみると、あの3人が反対側のホームにいたのである。
3人は、わたしと早智子ちゃんに向かって茶化すように言葉を投げかけてくる。
「お友達、帰っちゃうんだ!バイバイね」
「これでまた、早智子の友達は、わたしらだけね」
「早智子、学校が始まるのが楽しみだね」
わたしが、振り返り3人を睨みつけると、3人は視線を外し沈黙する。
早智子ちゃんは、怯え暗い表情をしている。
わたしは、早智子ちゃんの視線から3人を外すため立っている位置を逆にしながら3人を睨みつつも、無視するように視線を早智子ちゃんに向ける。
「早智子ちゃん、はい。」
わたしは、早智子ちゃんの手を取り、ボケットからプレゼントを手渡す。
早智子ちゃんは手のひらを広げ、わたしから手渡された物を見つめ笑顔を見せて、嬉しそうに「わぁ!可愛い猫ちゃん!」と言ってくれた。
早智子ちゃんは、わたしがプレゼントした猫の携帯ストラップを、さっそく自分の携帯に付けて、わたしに嬉しそうに見せてくれる。
プラットホームの反対側にいる3人は、早智子ちゃんの携帯にぶら下がる赤い猫を見て、表情を強張らせていた。