雨夜の月
臆病…それは、私です。


この距離を保ちたくて、本心を隠したまま、砕け散りもしない。

『友達』を利用して、彼女すら騙してる。



「嵐……」

「俺が…一番の臆病者だよ」

「……え?」

「お前を…失うから…これ以上は言わねぇ…」











もしかして、私と同じですか…?


少しでも傍にいたくて、飛び出しそうな言葉を、何度も飲み込んだ。


階段の踊り場で泣いていた彼女が、記憶の奥から鮮明に蘇る。


もしも私と同じなら、私たちはあの人を裏切れない。


「嵐…」

「お前も言うな」



嵐の棘が、心に刺さった。



彼女を守っているの…?

私たちの関係を守っているの…?



「美月ーッ!!」

遠くで千里の声がする。

嵐から目を逸らせずに、私は嵐の言葉を待った。


「ごめんな…美月」




気持ちを伝えることさえできずに、突き付けられた結果。


それなら、砕けた方がマシなんだよ。


伝えきって、諦めて、そしたら前に進める。


突然動いた二人は、叶わぬ形に、気持ちを封じ込めるしかないなんて…。



それは余りにも、最上級のフラれ方じゃないんですか…?


< 36 / 65 >

この作品をシェア

pagetop