流れ星との約束
2.綾北野球部
 会心の当たりで、打球が飛んでいく。それがレフトの頭を越したことを確認し、松永中はマウンド上の駿に頭を下げてバッターボックスから出た。
 
 
「ナイスバッティン」
 
「最後だけな」
 
 
 副キャプテンである和也に苦笑いで返すと、中はバットをケース――黄色の、ビール瓶を入れるケース――に戻す。すぐにキャッチャー道具を付け始めると、高い金属音が聞こえた。
 
 中がグランドに目をやると、和也の打球が右中間をやぶるのが見えた。
 
 
「海田さん、調子いいっすね」
 
「せやな。試合でもあれを打ってくれれば……な」
 
 
 背中から河北の声が聞こえたので、中はプロテクターを付けながら答えた。
 
 
「ですね。海田さんのバッティングはあんまり安定しないのが問題……ですよね」
 
 
 中が河北を見てみると、苦笑いしながらグランドを見ていた。中もそっちに目をやると、悔しそうにしながら和也が戻ってきていた。金属音が聞こえなかったので、空振りしたのだろう。
 
 
「ナイスバッティン」
 
「最初だけな」
 
 
 中の皮肉に、和也は苦笑いで返し、すぐに自分のグラブを持って、ポジションへと向かっていった。
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