流れ星との約束
 そのことをよく知っている中は大抵、河北への初球にカーブを要求する。打てないなら打てるようになればいい。少なくとも、直球しか打てない打者は試合で使えない。
 
 駿にカーブを投げさせることにより、少しでも河北の目を変化球に慣らすこと。そして、MAX140㎞/hの直球を武器とする駿の変化球に少しでも磨きをかけること。この2つを同時に満たすため、中は駿に変化球を多く投げさせるのだ。
 
 
 
 9球中、河北はレフト前ヒットが2本。内野フライが2本。内野ゴロが3本。空振りと見逃しが1回ずつだった。
 
 2本の安打はいずれも直球を打ったもので、5球投げられた変化球は見逃し・ファーストゴロ・ショートフライ・空振り・サードゴロだった。特にスライダーを空振りしたときの彼のスイングは、キャッチャーから見て酷いものだった。
 
 
「河北、どっちがいい?」
 
「決まってますよ。真っ直ぐで」
 
「了解」
 
 
 河北の返答を聞いて、中は迷わずカーブのサインを出す。それに対し駿は頷いて、投球動作に移った。
 
――悪いな。河北
 
 中は心の中で呟くと、キャッチャーミットを構えて、ボールを待った。
< 17 / 77 >

この作品をシェア

pagetop