流れ星との約束
「なっ……」
 
 
 絶対に直球だと思っていたのか、河北は豪快に空振りし、尻餅をついた。彼が慌ててこちらを見てきたので、中は少しニヤリと笑って駿にボールを返す。その仕草に河北はムカついたのか、立ち上がりユニフォームをはたくと少し中を睨んだ。
 
 
「直球がいいって言ったじゃないですか」
 
「そう言われて直球投げる馬鹿がどこにいるんや。お前に直球投げたら絶対打たれるんやから」
 
「え? それってどういう……」
 
「そのまんま。真っ直ぐをお前に投げたら絶対打たれるから曲げたんや。そうでもせえへんとお前を打ち取れへんからな」
 
 
 中の言葉を聞いて、河北の顔に少し笑顔が見えた。河北が単純だということをキャプテンである中は知っている。
 
 
「そ、そうですか。まあ寺島さんの直球はもう余裕です」
 
 
 その割には結構打ち取られていたと中は思ったが、それを言っては何の意味も無いので口にはしない。 
 

「そういうこと。まあ次は変化球も頼むで」
 
 
 河北は機嫌を良くしたのか中の言葉に頷くと、駿に頭を下げて、バッターボックスから出た。
 
 
「単純やな……」
 
 
 ついつい中は呟いていた。
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