Bloody Kiss
引き金を引けばいいだけ。それなのに指が動かない。

あの男を撃ちたい。
でも弾が当たれば負傷させてしまう。
当たりどころが悪ければあの男は死ぬ。

人を殺す。

その覚悟がある?

迷いが邪魔をする。それを振り払うように目を閉じてみるけど、指は動かない。

「躊躇いは隙を生む」

声が聞こえ、目を開けた。一瞬で間合いを詰められ、気付いたときには男の顔が目の前にあった。

「っ!!」

一瞬の出来事だった。
手首に手刀を食らい、銃が手から落ちる。直後に突き飛ばされ、そのまま背後の木にぶつかる。衝撃で一瞬息が止まる。

「かはっ……!!」

「女の子を痛めつける趣味はないけど、君がこの吸血鬼を庇うというなら容赦はしない」

ずり落ち地面に座り込んだ私を男は冷酷な目で見下ろしていた。

「どうして……、恢を、殺そうとするの?恢は、悪い吸血鬼じゃ、ないのに」

途切れ途切れになりながらも言葉を紡いでいく。
恢は人間を襲うような吸血鬼じゃない。人間を助けるためにバケモノ退治をしているのだから真逆だ。

「君は、元人間の吸血鬼がどれほど危険が知らないんだ」

そう呟いた男の顔はほんの少しだけ、哀しそうだった。



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