Bloody Kiss
「本当に何も知らなかったんだね、アリア」

「っ!!」

それは今まで考えていたことが全て吹き飛んでしまうような衝撃だった。

名前を呼ばれたことに驚いてバッと顔を上げると、青年と目があった。

「どうして私の名前を知ってるの!?」

私が問いただすと、青年は意味ありげに笑った。

「協会に二年前の事件の報告書が残ってたんだよ。ある一家が吸血鬼に襲われ、一人の少女だけが生き残り、元人間の吸血鬼によって助け出された。その少女名前は――」

『バンッ』

青年の言葉を遮るようにテーブルを叩いて立ち上がった。

その言葉の続きは聞きたくない。二年前の、特にあの日のことは思い出したくない。

「帰る」

そう言い残して、席を離れた。
青年の隣を通り過ぎようとしたとき、手を掴まれた。

「離して」

掴まれた手を強引に引っ剥がす。

「俺はトーマ。助けが必要になったらいつでも呼んで」

「助けなんて必要ない。あったとしても貴方には頼まない」

「冷たいなあ」

トーマと名乗った青年の言葉を無視して歩き出した。

「またね、アリア」

数歩進んだところで後ろの方からトーマの声が聞こえた。

「……私は二度と会いたくないわ」

振り向かずに吐き捨てるように呟いた。彼に届いていたかは分からないけど。

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