Bloody Kiss
「……っくしゅん!」

静かな霊園にくしゃみの音が響いた。

両親の墓前に来てからどの位たったのだろう。そんなに時間は経っていないと思ったけど、日はもうほとんど沈みかけていて辺りはだいぶ暗くなっていた。いつの間にか体が冷えていたようだ。

「もう日が暮れる。そろそろ屋敷に向かおう」

そう言いながら恢は自分の上着を脱ぎ、それを私の肩に掛けてくれた。

「ありがとう」

もう歩き始めている恢の背中にお礼を言う。

「また来るね」

両親の墓標にそう言い残し恢を追いかけた。

「……エリィに会いたいか?」

追いついた途端、そんな質問を投げかけられて思わず足を止めそうになった。

確かにどんな人か気になるけど、エリィに会うとなると心の準備が必要だ。会ってみたいけど、会いたくない。そんな私の葛藤を知ってか知らずか更に付け加えた。

「大丈夫。エリィはお前を気に入る」

本当に?と聞きたくなったけど止めた。恢が言うのだからそうなのだろう。自分の恋人が他の女と旅することを許して、その女も受け入れるなんてとても寛大な人なんだろうな。

いや、そんな人だから恢の特別なんだろう。

じゃあ私は……?
きっとエリィの足元にも及ばない。

……やめよう。エリィと比べたって負けることは分かりきってる。ならこんなこと考えたって時間の無駄だ。
えぇい女は度胸だ!堂々とエリィに会ってやろうじゃないの!

「恢、エリィさんに会いたい!会わせて!」

恢は頷いて「こっちだ」と言って歩き出した。
気合いを入れるために両頬を叩いてから恢を追った。


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