拝啓、ばあちゃん【短編】
俺が見つけ出してやる。


碁盤の目のようになっている町内を目をこらしながら走った。


ばあちゃんが仲が良かった近所の人の家。


ばあちゃんが井戸端会議をしていた通り。


でも、町内には人の気配すらなくて。


俺は大きな道を1本挟んだ商店街の方へと自転車を走らせた。


ばあちゃんが良く行っていた小さなお惣菜屋さん。


ばあちゃんと一緒に入った事のある喫茶店。


それでも田舎の商店街は、この時間は全てのシャッターが降りていて。


そこにいるのは、駅から流れて来たであろう、家路に向かうスーツ姿のサラリーマンや若い子ばかりだった。


乳母車を押しながらよたよたとしか歩けないばあちゃんが、そんな遠くに行くはずがないだろう?


俺は何度も何度もその周辺を走らせた。


ただただばあちゃんの無事を祈りながら。


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