紺色の海、緋色の空
「ねぇ、聞いていい?」
ふいにシロナが振り返り、バスローブを羽織り直して僕に訊ねた。
「何を?」
「お姉さんのこと」
「早紀の?」
「そう。早紀さんとあなたのこと」
「……」
僕はしばらく押し黙った。
それからビールを一息にあおり、マッチで煙草に火を付けた。
ふと疑問に思った。
彼女……シロナは、いったいどこまで僕達のことを知っているのだろうか?
何もかも知っているようで、そのくせ何も知らないようにも見える。
彼女は完璧に人になりすまし、風呂の入り方も食事の採り方も、セックスのことだって分かっているのに、誰もが知る漱石のことは知らないと言う。
「いいよ」と僕は答えた。
我ながら歯切れの悪い返答だった。
ふいにシロナが振り返り、バスローブを羽織り直して僕に訊ねた。
「何を?」
「お姉さんのこと」
「早紀の?」
「そう。早紀さんとあなたのこと」
「……」
僕はしばらく押し黙った。
それからビールを一息にあおり、マッチで煙草に火を付けた。
ふと疑問に思った。
彼女……シロナは、いったいどこまで僕達のことを知っているのだろうか?
何もかも知っているようで、そのくせ何も知らないようにも見える。
彼女は完璧に人になりすまし、風呂の入り方も食事の採り方も、セックスのことだって分かっているのに、誰もが知る漱石のことは知らないと言う。
「いいよ」と僕は答えた。
我ながら歯切れの悪い返答だった。