紺色の海、緋色の空
「……何も、出来なかった」

長い長い沈黙の後、ようやく僕は声を絞り出した。

惨めなほどに声が枯れていた。

毎日、毎日、飽きることなくヤツは早紀の体を弄び続けた。

僕が飛びかかれば、ヤツは容赦なく僕を殴りつけた。

最初は必死で抵抗した。

だけど、やがて僕はヤツの声を聞くだけで体が萎縮し、呼吸すらまともに出来ない有様になっていた。

条件反射とでも言うのだろうか。幾ら頭で止めようとしても、心が、体が、逆らうことを拒絶した。

その頃から早紀は抵抗を止めた。

まるで従順な子猫のように、男を受け入れるようになっていった。

老獪で巧みなヤツの指遣いに、いつしか早紀は僕にも見せたことのない恍惚の顔を浮かべ、何度も体を痙攣させた。

ヤツは早紀の愛液を僕に見せつけ、勝ち誇った顔で節くれ立ったそれを早紀の奥深くに突き立てた。

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