紺色の海、緋色の空
高校を卒業した僕は、この町に残った。

十八年間早紀と歩いたこの町に残り、深海魚のように生きた。

ただひっそりと。息を殺して。

誰のためでもない。それが僕に課せられたたった一つの生存理由、レゾンデートルなのだと心の中で何度も繰り返し、ただ生きるためだけに呼吸を続けた。

"生きなければならない"

"死ぬことは許されない"

まるで眠っているかのような早紀の死に顔を見た時、僕は漠然とそう思った。

本当は追いかけたかった。

その方が僕にとってはるかに楽だったし、早紀のいない世界になんの未練も興味も感じられなかった。

だけど、できなかった。

早紀は死んだ。

僕のために死んだ。

「心配しないで」と早紀は言った。

その時の声が、笑顔が、すべてを物語っているように思えてならなかった。

あなたはまだ死んではいけないと、早紀の瞳が訴えていた。

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