紺色の海、緋色の空
「少しお腹空かない?」

シロナが低い城壁の上を歩きながら、僕の腕を取った。

「ほらもう一時過ぎよ」

「本当だ」

僕たちはウーズ川を渡り、ヨークミンスター寺院へと続く道の途中で少し遅めの昼食を取ることにした。

僕はイギリスに来て三度目のマルゲリータを注文し、シロナは魚介類をふんだんに使用したパスタを食べた。

イギリスの食事をとりわけ美味しいとは思わなかったけれど、ピザとパスタにハズレはなかった。

ただし、食事が並ぶまでたっぷり三十分ほどもかかった。

僕たちはそれを五分で食べた。

食後に紅茶を飲んで店を出ると、さっそく僕たちはヨークの街を散策することにした。

ヨークからエディンバラまでは列車でおよそ三時間。

ロンドンから一日で行けないことはない距離だったが、僕が日本から持ってきていた旅雑誌を見たシロナがこの街に寄りたいと言い出したのだ。

彼女の直感は馬鹿にできない。それはアデルフィホテルで証明済みだ。だから、僕はシロナの意見を尊重することにした。

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