紺色の海、緋色の空
「変ね」

とシロナは首を傾げた。

一時間近く探し回ったけれど、結局ポストは見つからなかった。

乱立するデパートの中や、一本裏の路地の隅々など、探そうと思えば幾らでも探すべき場所はあるのだ。これでは日が暮れる。

とはいえ、僕たちに時間的な制約などあるはずもないのだから、そう言う意味では気楽な捜し物には違いなかった。

「ねぇ、あれは何」

早々と足が怠くなってきた僕がベンチに腰掛けていると、シロナが僕の肩口から顔を突き出して空を指さした。

「ああ」

凸凹した建物の隙間から垣間見えたその細長いモニュメントのことは、この僕でも知っていた。

「ネルソン提督の記念碑だよ」

「ネルソン?」

「ナポレオン戦争でフランスとスペインの連合艦隊を退けた英雄さ」

「へぇ」

昨日の羊と同じように、たいして興味のない様子でシロナが相づちを打った。

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