only one


引き取った後も心を閉ざしたままの魁夢を思い父は全寮制の学校に入学させた。


魁夢を思ってとった行動。


でもそれが益々魁夢の心を皮肉にも痛みつけたんだ。


そして魁夢は大学を出て家には帰らずにそのまま独立した。


魁夢を諦め再婚した父と私の母の間に生まれた私の事を知った魁夢はどんな気持ちだったのか想像もつかない。


だから家に帰ってこなかったんだ。


だから私と目を合わさなかったんだ。



「そして魁夢様は遥夢様にご自分の苦しみと同じ苦しみ、それ以上のことを…。」



言葉を詰まらせ涙を流す仲村さん。



私の歩いた道、歩かされた道は魁夢と通った道なんだね。



「魁夢様の出生の秘密を知る者は今では私だけなのです。
この家の後継者として遥夢様が立ち上がるためには私が必要なんです。
遥夢様、どうか今の自分を諦めてしまわないで下さい。
どうか…。」


私の前で仲村さんは跪き両手を差し出した。




でも私にこの手は取れない。


そうでしょう?


取ってはいけない。


魁夢にまた深い傷を負わせてしまうことになるでしょう?





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