only one
私は仲村さんと視線を合わせた後小さく首を横に振った。
後継者になんてならなくていい。
魁夢がどんな気持ちでこんな行動を取っているのかはわからない。
だけどやっと見つけた魁夢の居場所を奪う事なんて私には出来ないんだ。
「遥夢様は諦めてしまわれるのですか?
このまま魁夢様のいいなりになって嫁いでしまわれるのですか?」
必死に食い下がる仲村さんの手を取って私はニッコリと微笑んだ。
「いいなりになんてならないわ。なった振りをしてきっと逃げ出してみせる。
ここで諦めたら両親を悲しませることになるでしょう?
仲村さんに気付かせてもらったの。
私諦めていたから…
人形になってしまっていたから…
だけど思い出したの。
いつも母の言ってた言葉を。
自分の思うままに生きなさいって言ってくれた母の言葉を今思い出したわ。」
心配そうに私に視線を向ける仲村さんにもう一度ニッコリと笑いかけて私は温室を出たんだ。
迎えが来るのは夜中。
今日は最後の食事を魁夢と2人で取ることになっている。
夕食の時間に私が家にいないときっと温室まで呼びに来るだろう。
仲村さんがいる温室には誰も近づけてはいけない。
「またきっとどこかで逢いましょう。」
温室の入り口で振り返らずに仲村さんに声を掛けた。
すすり泣く声に見送られて私は新しい一歩を踏み出したんだ。