only one
膝をついたまま私は床をジッと見つめていた。
もう何も見たくない。
触れたくない。
聞きたくない。
感じたくない。
いっそ全てを閉ざしてしまいたい。
床の上を滑るように差し出された愛しい人の掌。
赤い大きな星形の痣がマツのものだという証拠。
その手に自分の手を重ねると私の体は引き寄せられスッポリとマツのぬくもりに包まれた。
夢だったのよね。
悪い夢を見ていたのでしょう?
だってマツはこんなに暖かいんだもの。
そう思って見上げると悲惨な現実が私の瞳に飛び込んできた。
「嘘ッッ!!
う…そ…でしょ?」
頭のないマツの体。
首から流れ落ちる真っ赤な血を見て私は目の前が真っ白になったんだ。