【奏】ミントチョコレート
「はぁ?!」


怒りを含んだその声を発したと同時に

岩瀬君はまたこっちに振り返った



「どう考えればそう飛躍すんだ」



「えっ…だって私だよ?

そういう気持ちなんないでしょ?」



「…バカじゃねぇの」



冷たい声に胸がチクッと痛む。



「ははは…だよね」




今度は私が背中を向けた。



自分で言った癖に…心が痛い。




みんなといる時…


同じ会話してても


こんな風に胸が痛くなる事なんてないのに…。




「真剣に想ってるって言ってる答えがそれなのか?

俺の気持ち、
バカにしてんのか?」



声が怒りを含んでて…。


振り返るなんてもう出来なくて…


さっきから痛む心が…苦しい。



「ちがっ…違うよ…

違うけど…」




「信じられねぇってか…」



信じられる訳ないよ。


だって…嫌われてると思ってた…



「素振りとかなかったし…」



そう答えた瞬間

背中に温もりを感じて
抱きしめられてた。



「さっきから…ずっとこうしたいと思ってたし…」



そう耳元で呟かれて

一気に身体中の熱が集まったんじゃないかって

自分でも火照るのがわかる…。


きっと…今、真っ赤になってる…んじゃないかな。


だって頬も熱い。



そう思った瞬間

温もりはすぐ離れた。



「でも…
好きじゃない奴にされても…
嫌なだけだろ

だから、向こう向いてた

……ごめんな」


語尾が弱々しく呟かれたその言葉に振り向くと

岩瀬君は見た事もない切なそうな表情を浮かべてて…



「やっぱ、俺

床で寝るわ」



起き上がろうとしたその腕を掴んだ。



声にならなくて…


…言葉にならなくて…



「ははは

そんな気遣わなくていいし?」


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