【奏】ミントチョコレート
「…嫌じゃない」



弱々しくて…声も震えながら呟くと…



「無理すんな」



そう優しく微笑んでるのに…

瞳が哀しそうで…。



見つめ合ったまま暫し静寂の時が流れて…



何て言えばいいのかな…。



―――でも…





「…一緒にいたい」



どう言えばいいのか
わかんなくて…



「…はぁ?」




この気持ちが何なのか…



「それって…期待してしまいそうなんだけど…」




「私も…好き…だよ」




最初は苦手だった。



嫌われてると思ってたし

だから…近寄らないようにしようと思ってた。



でも…それは

自分が傷つかない為で…。



向けられる視線が冷たくても

どこか気になってた。



話せば話すほど

好みが似てるとか…

些細な事が嬉しくなって


たった数時間だけど…



確かに気持ちは加速して…


気持ちが始まってた。




…もしかしたら…


心の底にあった恋の芽生えが
花開いただけなのかもしれない。




「嘘じゃねぇよな?」




「…うん」



「俺の事、嫌いじゃねぇの?」



「…うん」



〝うん"しか言えなくて…。


何だろう…もどかしい。



「信じらんねぇ」



そう呟く腕に抱きしめられた。



素直に抱きしめられて

腕の中で胸に頬を寄せると

勢いよく早く拍動する胸の音が聞こえる。




「俺の彼女になって?」



頭上から聞こえる甘い声




「…はい」



そっと背中に自分の手を回せば

強くきつく抱きしめられて…


だけど、その窮屈さが心地いい。






苦手だと思ってたアイツを

好きになってて

今日からは

私の大好きな彼氏に…


そんな恋の始まり。



【Fin.】


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