孤高の狼に捧ぐ恋唄
名前すら呼んであげられない私に、マスターは言った。
「明日香ちゃんの家に向かう途中で、事故にあったらしいんだ。
周りの人の話だと、小さな女の子が車道に飛び出して、
庇って巻き込まれたって……
女の子は幸い、月の体が……クッションのようになって……
大きな怪我はなかったみたい……」
そこまで一気に言うと、マスターは月に布を掛けなおした。
ぼんやりと突っ立った私に、マスターが気掛かりそうに言葉を掛けてくれたのはわかったが、応える余裕はなかった。