闇夜の数だけエゴはある
儚を足蹴にしたまま、青年を視線の刃で釘付けにする。

その場から一歩も動かせない。

動いた瞬間に無影の蹴撃で両断する。

…私は油断なく青年に問いかける。

「どこの家系かしら?『楽園(エデン)』では見かけない顔だけど。新参者?」

私と『同類』ならば、この質問だけで意味が分かる筈だ。

ただの人間ならばわからないという顔をする。

亜吸血種ではない人外ならば問い返す。

私と同類でありながらダンマリならば、即座にこの場でぶち殺す。

そういう点で。

「佐久間武羅人。しがない無名の亜吸血種だよ」

包み隠さず素性を答えたこの青年亜吸血種は、なかなかに賢明といえた。




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