加納欄の催眠術 シリーズ8
地図を祥子先輩に見せて、何か説明をしている感じだった。

祥子先輩も、何か答えているようだった。

「今日は、もぉ、止めませんかぁ?」

聞こえないのは、わかっているけど、祥子先輩に、小声で語りかけてみた。

周りのカップルは、入れ代わり立ち代わりのように、途切れることなく、まだ、公園内で好き勝手していた。

ふと、祥子先輩に視線を戻すと、先ほどの男が、祥子先輩の隣に座っていた。

端から見れば、カップルが会話しているようにも見える。


う~ん(-.-)


決め手がない……。


5円玉らしきものも見えないし。


もう少し、様子見かな。


そのまま、祥子先輩を監視していた。

祥子先輩は、気が合ったのか、男と話している。

「祥子せんぱぁい。犯人逮捕忘れてませんかぁ」

祥子先輩の表情はわからないが、男の表情は、笑っているのがわかった。


楽しそうにしちゃって。


あ~(>_<)


つまんないっ(-.-)


あたしは、ブツブツと、文句をいい始めた。

次第に、イライラしてきたりもする。

すると、祥子先輩が、突然男の首に手を回した。


え!


男の鼻に、自分の鼻を合わせる。

何か話しているが、聞こえない。


どっち!?


催眠術にかかってるの?


どうやったのか見えなかった。


祥子先輩の手は、首から頭に移動し、髪の毛をもてあそんでいる。

そして、そのままキスしようと祥子先輩は、顔を少し上げ、男に吸い寄せられるかのように顔を近づけていった。


ダメぇ(>_<)!!!


迷ってるひまはなかった。

催眠術にかかってなくても関係なかった。

あたしの直感が、ダメだと思っただけだ。

駆け寄っても間に合わないっ。

あたしは、道端の石を拾って、男に投げた。

手加減するつもりはなかったから、男の頭に直撃してしまった。

男は、突然のできごとに頭をおさえ、石が飛んで来た方向を睨んだ。

祥子先輩の動きは、止まったままだった。

あたしは、慌てて祥子先輩のところへ駆け寄った。

「お、お姉ちゃんっ!ごめんっ!遅れちゃった!」


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