芋女
いつもより風景に注意しながら自転車をこいだ。
今まで意識してなかったものが、こんなに綺麗に見えるのは不思議だった。
心の奥につん、とした何かの痛みが生まれる。
海も、山も、野ざらしの土地も、漁船も、港も、舗装されてないコンクリートの道路も、通っていた小学校も、クラスメイトの家も、全部が輝いて見えた。
すべて、この瞳に焼き付けようとしたけど、難しすぎた。
「おはよ~あかり!」
「あ おはよっ」
ふと前を見ると希穂がいた。気付かなかった。
「どーしたん?なんか顔色悪いよ」
ぎくっとなって、目が泳いだこの一瞬を見られていなかったか心配になる。
「何でもないよ?ほら、遅刻しそう。行こや!」
「うん」
希穂はしばらくいぶかしげにあたしの顔を見ていたけど、
しばらくして気に留めなくなっていた。