芋女
別れ
朝起きて、いつも通りにジャージを着る。
顔を洗って歯をみがいて朝食を食べる。
準備して玄関を出ていこうとした時、母があたしを呼び止めた。
「あかり」
「なに?」
振り向いて、たずねた。
「…今日が最後の一日だから。楽しんでおいでよ」
「うん」
あたしはそれだけ言って、いってきます も言わずに出て行った。
母はそんなあたしの背中を、どんな気持ちで見ていたんだろう。
庭に置いてある自転車に乗る。
きっと、あっちでは電車かバス通学になる。
こうやって自転車にのって行くことももう無いだろう。
ぎゅっとハンドルを握って、いつものように希穂と待ち合わせしている場所に向かった。