暗黒の時代(とき)
今にして思うと、部活を辞める方法はなくはなかったはずである。校則を変えるとか、新しい部を作るとか。でも、当時の私はそれを思い付けるほど、思考に自由がなかった。私は親にも口答えが出来ない程の優等生で、なおかつ先輩の目も恐かった。
先輩にも、「きっと部活嫌いだけど嫌々やってるんだろうなぁ」という人は何人かいた。だけど、もし「部活が嫌」なんて言ったら「私だって嫌だけど我慢してやってるんだから!」と言われそうで恐かった。そういえば、1つ上の先輩たちの担任は、前述のS先生だったな…。

先生たちの誰一人、部活を辞める方法を教えてはくれなかった。その頃聞いた話によると、「部活が嫌だからってすぐに辞めさせたら、わがままになる」という理由で部活全員加入を強制(先生たちは決して「強制」という言葉を使おうとしなかったが)していたようだ。素直すぎた私は「そうなのか」と納得し、嫌々ながらも部活を最後まで続けたが、今思うととんでもない言い草である。部活を辞めたくらいでわがままになるなんて、そんなに子供を信用していないのか。そして、毎日2階の窓から下を見ては「ここから飛び下りたら楽になるかな」「せめて怪我してしばらく部活休めるかな」と思うような生活が、子供の精神衛生上良いと言うのか。
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