お姫様と1.5人の男
玄一さんと歩く神社の散歩道。此処までの道のりでも結構歩いた筈なのに、

あまり疲れたとかと言うのは全くない。不思議なものだ。

ぐるっと1周するまでに玄一さんはりつ子さんとの思い出を延々と教えてくれた。

あの木には実は自分達の名前を内緒で彫ったとか、

(見てみたら本当にあった。2人の名前と、訪れたであろう日付がしっかりと今でも)

突然雨が降ったから境内で雨宿りをしたとか……微笑ましいものばかり。


「ああ、そうそう。此処のおみくじには凄い思い出があってのう……」


お賽銭箱にお金を入れて参拝をした後、思い出したかのように玄一さんが言う。


「此処のおみくじで大吉が出たらこうしようって決意をしたら、凶が出てしまってのう……
あのショックはずっと忘れられなかったのう……まあ、大吉が出るまで何度もやっちゃった」


やっちゃったって……それだけどうしてもやりたかった事があったんだろうな。
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