ネオン
3
家に着くと、時計の針はもう3時を廻っていた。
階段を上り、玄関のドアをあけると、
ワンワンッとミニチュアダックスのキャンディが吠えた。
「しっ!いい子にして。お母さん起きるから。」
あたしはキャンディを抱えてリビングへ向かった。
キッチンの横に、いつものようにラップに包まれた夕食がある。
片手でキャンディを抱き、余った手でラップを剥ぎ取った。
「あー。お腹すいたー。ねぇキャンディ。」
髪はスプレーでがちがちだし、
少しタバコ臭い。
早くお風呂に入って、課題をやって、明日に備えないと。
「琴音。」
眠そうな顔でお母さんがリビングのドアの前で立っている。
「何?ごめんね、起こして。」
「ほんと、静かにしてよ。で、何なのよその髪型。」
「ヘアーメイクでやってもらった。」
遅めの夕食のハンバーグをもぐもぐさせながらあたしは答えた。
「そお。・・・夜の仕事でもやんの?」
若干馬鹿にしたような、
にやついた顔でお母さんは言った。
「うん。琴音キャバクラやる。」
「アハハ!あっそお、あんたが。
やれるの?あんたに。いっぱい稼いで養って頂戴。
あたしも夫が居ないと大変だよ。」
そういってお母さんはまた寝室へ戻っていった。
普通、というか
大抵の母親なら水商売をやる娘に不安や心配を抱くかもしれない。
けどあたしは自分の母親にそんな言葉は期待してない。
3年前に父親が死んでから、
お母さんとあたしの関係は冷え切ったままだ。
嫌いなわけじゃない。
でもどう接していいか、
きっと、お互いがまだわからないまま。
彼女の言葉を聞いて、
あたしは決意を固めていた。
自立して暮らせるくらい、
この仕事で稼いでやる。