准教授 高野先生のこと
「オレは今さ、奥さん大変だからあんま時間ないんだよ」
森岡先生のところはもうすぐ待望のお子さんが生まれる予定なのである。
「そりゃあ森岡から見れば?僕なんて?お気楽な独身だろうけど」
「だろ?だろ?」
「僕はおまえと違って家事だって自分でやってるんだからな」
「あー?オレだって奥さん身重で、家事は今ではオレの――」
えーと、この状況って……。
どうにも壮絶な譲り合いに見えて仕方がないのは気のせいだろうか???
「あの、先生方……」
「何?鈴木さん」
「なんですか?鈴木さん」
「私、自分で頑張りますから」
「……」
「……」
「……」
結局、このときは私はどちらに譲られることもなく。
話はうやむやになって終わった。