准教授 高野先生のこと

翌日が日曜だったので私は迷わず先生のうちへ帰ってきた。

もっとも、本当は“帰る”なんて言い方正しくないのだろうけれど。

けど、それくらい私はもうすっかりこのうちの人になっているから。

先生は先に寝ているようにと言ったけれど、やっぱり待っていたかった。

“涼子ちゃん”のことを思いきって聞いてみたくもあったし。

森岡先生とどんな話をしたのかも気になっていたし。

高野先生といっぱいいっぱい話したかった。


ゆっくりお風呂に入ったあと、私は先生にメールしてないことに気がついた。

いつもは出発メールや到着メールみたいな事務連絡?はかかさないのに。

だけど――

一旦開いたケータイを、何故だかすぐにパタンと閉じた。

メールするのが面倒だったわけじゃない。

ただ、なんとなく。

自分でもよくわからないけど、なんとなく……。

そうして私は疲れた体をベッドにドサリと投げ出した。


二人だと少し窮屈で一人だと少し広々な先生のうちのベッド。

「寛行さん……」

声に出して一人静かに呼んでみる。

“涼子ちゃん”は彼のことをどんな風に呼んでいたんだろう。

寛行さんは彼女のことを何て呼んでいたんだろう。

今日聞いた話をおさらいしながら、あれやこれやと考える。

そうしているに疲労困憊の私は――

いつの間にか睡魔にさらわれ、眠りの国に連れて行かれていたのだった。

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