准教授 高野先生のこと
3.


二人で初めて海へ行った日。

あの日の朝、僕は前もってメールもせずに、

わざと突然、君に電話をしました。

大学以外の場所で勉強という口実もなしで、

僕は君に会ってみたいと思っていました。

けれども、もしも君に難色を示されたら、

そう思うと、少し気後れしていたのです。

だから、もし君が電話に出てくれたら……。

もし君の気がむけば、都合があえば、と。

そうでなければまた今度そのうちに、と。

僕はあくまでも気楽に、まったく気軽に、

そんな風に、君を誘っているんだ、と。

そうやって、自分に言い聞かせながら、

僕はようやく、あの電話をしたのでした。

君は、そんな僕の電話に出てくれて、

快く急な誘いに応じてくれました。

日曜日の君は、いつもの君とは少し違う、

僕が初めて出会う君でした。

まだ知らなかった君の表情に出会うたび、

僕はますます君のことが好きになり、

もっともっと君のことが知りたくて、

ずっとずっと君の隣りに寄り添いたくて。

あのとき、そんなふうに切望する僕はもう、

完全に君に恋するただの一人の男でした。

そして、君は教え子でも後輩でもなく、

僕の、たった一人の愛しい女の人でした。



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