准教授 高野先生のこと

私は秋ちゃんの大きなお腹にそっとそっと手をあてた。

「いよいよだね」

「まあね」

「なんか落ち着いてるなぁ」

「あたし?」

「うん」

当の秋ちゃんはでーんと構えているのに、かえって私のほうが少しそわそわ。

「人事を尽くして天命を待つ」

「おおーぅ」

「言わせてもらっちゃうけどさ、あたし、協力者として全部やり尽くしたもん」

「協力者?」

「そっ。中の人の協力者」

秋ちゃんの赤ちゃんに対する感情や距離感ってやっぱり個性的だと思う。

「一番大変なのは中の人で、彼の一番近くにいるあたしは一番の協力者ってわけ」

「ほほう」

冷静で客観的で過剰な甘さはないけれど、厚い信頼と深い絆はちゃんとある。

ちょっと風変わりな気もするけれど、秋ちゃんらしい関係性だなって思う。
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