准教授 高野先生のこと

高野先生が言うには――

「たぶん、自宅のほうにあると思うのですが」

確かにあるにはある、と。

しかしながら、すぐに見つかるか自信がないとのこと。

「並木先生宛にこちらにお送りしますよ。見つかり次第」

先生は思いほのか親切だった。

「そんなっ、悪いです」

「いえ、たいした手間では」

「でもっ……」

「そんな気になさらずに」

「ですけどっ……」


そんなやりとりを並木先生はおもしろそうに見物?していたけれど――

「鈴木さんも、たまには母校へ出かけるのもいいんじゃない?」

そろそろ頃合とばかり折衷案を出してきた。


結局、本は私が高野先生の研究室に取りに伺うことに。

そして――

「その時に少しお手伝いしてさしあげなさいな」

本を貸していただくお礼に高野先生のお仕事をお手伝いすることに。

高野先生が学会事務局の雑務に忙殺されそうだから、と。


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