【奏】春に降る雪
次の日、仕事を休みたい気持ちは大いにあったけど、体調が悪くもないのに休むわけにはいかない。




眠れなかった私の顔は相当酷かったらしく、出勤してしばらくは皆に心配されて申し訳なかった。




そんな中ハルだけはデスクに座ったまま動こうとしなかった。





私も気持ちを吹っ切るように仕事に専念しようとした。




だけど、狭い社内で聞こえてくるハルの声に反応してしまう。




声を聞く限りではいつもと変わり無さそう。




笑う声も頻繁に聞こえる。



瞳子先輩に想いを伝えられたのかな。

2人は上手くいったのかな?












『……ね……


茜っ!!』





「はいっ!!」




肩を揺すられながら大声で名前を呼ばれて我にかえる。




覗き込むように私を見ているのは、今もまだ私の指導役の孝二先輩。




『仕事、終わったんならさっさと帰る支度しろ。
お前体調悪いんだろ?』




その言葉に時計を見るととうに定時を過ぎていた。

辺りを見渡しても社内には孝二先輩しか残っていない。




いつの間にこんなに時間が過ぎてたんだろう。





『早く、帰る用意しろって。じゃなきゃカギかけて閉じ込めるぞ』




その言葉で慌ててパソコンをシャットダウンさせて、デスクの上を片付けた。




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