朱鷺
「な~に?この町のお水がってこと?」
「うん、一般的にはさ、私の勝手な想像だけど、ニュースでも時々刃傷沙汰になったりするじゃない。でも、この町の人はさ、夜の人も多いし、恋仲のもめ事なんかあんまりないのかな、と思って」
ママは、長い指を1本ほっぺに添えてニッとすると、
「逆じゃない?どろどろしたもんよ」
「だって、色恋沙汰は慣れているでしょう?」
「そんなもん慣れるもんじゃないわよ。浮気者は腐るほどいるけど、恋人になれる人ってすごく少ないもんよ。この人がいなくちゃ生きていけない、って思いこんじゃう子が多いのよ」
由美子は、へぇ~と口に出して言った。
「お水とか、こっちの世界の子って。一般の人みたいに結婚とか考えてもらえない子が多いから、今がすべてだからこそ命がけになっちゃう子がいるのよね。相手を刺したってのはめったに聞かないけど、自分を傷つけちゃう子は多いわよ」
「・・・ふーん。あっさりして見えてたわ」
「お水も、それ以外も、同じだとは思うんだけどね。恋ってしょせんどろどろしたもんじゃないのかしら」
由美子は、不安に取り囲まれながら、虚しいため息をついた。自分はしょせん部外者である。何もすることはできない・・・
「な~に、由美ちゃん、辛い恋でもしてんの?」
「・・・あたしじゃないんだけどね・・・」
真理は、朱鷺の変化を感じ取っていた。恋する者の勘だ。これまで、たいてい土日泊まっていた朱鷺は、日曜は帰るようになっていた。翌日の仕事が辛いからと言って。
真理はそんなこと言って、飲み屋にお気に入りの子でもできたんじゃないかと、朱鷺の出入りしそうな店を回ったが、来ているふうはなかった。
するとなお不安である。誰かの家にいる可能性があ
「うん、一般的にはさ、私の勝手な想像だけど、ニュースでも時々刃傷沙汰になったりするじゃない。でも、この町の人はさ、夜の人も多いし、恋仲のもめ事なんかあんまりないのかな、と思って」
ママは、長い指を1本ほっぺに添えてニッとすると、
「逆じゃない?どろどろしたもんよ」
「だって、色恋沙汰は慣れているでしょう?」
「そんなもん慣れるもんじゃないわよ。浮気者は腐るほどいるけど、恋人になれる人ってすごく少ないもんよ。この人がいなくちゃ生きていけない、って思いこんじゃう子が多いのよ」
由美子は、へぇ~と口に出して言った。
「お水とか、こっちの世界の子って。一般の人みたいに結婚とか考えてもらえない子が多いから、今がすべてだからこそ命がけになっちゃう子がいるのよね。相手を刺したってのはめったに聞かないけど、自分を傷つけちゃう子は多いわよ」
「・・・ふーん。あっさりして見えてたわ」
「お水も、それ以外も、同じだとは思うんだけどね。恋ってしょせんどろどろしたもんじゃないのかしら」
由美子は、不安に取り囲まれながら、虚しいため息をついた。自分はしょせん部外者である。何もすることはできない・・・
「な~に、由美ちゃん、辛い恋でもしてんの?」
「・・・あたしじゃないんだけどね・・・」
真理は、朱鷺の変化を感じ取っていた。恋する者の勘だ。これまで、たいてい土日泊まっていた朱鷺は、日曜は帰るようになっていた。翌日の仕事が辛いからと言って。
真理はそんなこと言って、飲み屋にお気に入りの子でもできたんじゃないかと、朱鷺の出入りしそうな店を回ったが、来ているふうはなかった。
するとなお不安である。誰かの家にいる可能性があ