朱鷺
る、そうなると捜しようがない。夜の町に真理も朱鷺も知り合いは多いが、もう10年あの町に出入りして、昔の恋人もいたような真理と違って、朱鷺は夜の町に来たとたん、真理とつきあったようなもので、朱鷺の昔の恋人を知る者はいない。この町にはいないのだ。朱鷺本人から聞いた高校の頃の同級生や、バイト時代の同僚しか知らない。
真理にとって朱鷺は、長くつきあえている3人目の男だ。朱鷺までの男とは相手の浮気で別れた。今回も同じだと、思ってしまう。自分の何がいけなかったんだろうと考える。今までの男には、浮気が発覚するたびに問いつめた、監視するように連絡をやたらとった。それがなお嫌われることは学習した。だから今、容疑は真っ黒なのに口に出していない。口に出すとそれこそ終わってしまいそうで、怖い。でも、誰なのか確かめたい。どうすればやめてくれるんだろう、どうすれば戻ってきてくれるんだろう。ありえないとは思いながら、どーか水商売の女ではないことを祈った。朱鷺が水商売の女をもしも愛したらどうすることもできない、と思った。
「由美ちゃん、飲もうよ」
久しぶりのメールに驚きながら、由美子は朱鷺を自宅へ呼んだ。外では話せない内容になりそうな予感がした。
「あはは、わざわざ焼酎とウーロン茶用意してくれたの?由美ちゃん飲まないのに」
朱鷺の笑い声は頼りない。ビール一辺倒の由美子は、今夜も着物だ。
「由美ちゃん、自分ちでも着物なの?」
「他の格好を見せるのが恥ずかしいのよ」
着慣れている由美子にはなんでもないことなのだ。由美子は苦笑した。自分にではなく、朱鷺が的はずれな話しばかりするから。
真理にとって朱鷺は、長くつきあえている3人目の男だ。朱鷺までの男とは相手の浮気で別れた。今回も同じだと、思ってしまう。自分の何がいけなかったんだろうと考える。今までの男には、浮気が発覚するたびに問いつめた、監視するように連絡をやたらとった。それがなお嫌われることは学習した。だから今、容疑は真っ黒なのに口に出していない。口に出すとそれこそ終わってしまいそうで、怖い。でも、誰なのか確かめたい。どうすればやめてくれるんだろう、どうすれば戻ってきてくれるんだろう。ありえないとは思いながら、どーか水商売の女ではないことを祈った。朱鷺が水商売の女をもしも愛したらどうすることもできない、と思った。
「由美ちゃん、飲もうよ」
久しぶりのメールに驚きながら、由美子は朱鷺を自宅へ呼んだ。外では話せない内容になりそうな予感がした。
「あはは、わざわざ焼酎とウーロン茶用意してくれたの?由美ちゃん飲まないのに」
朱鷺の笑い声は頼りない。ビール一辺倒の由美子は、今夜も着物だ。
「由美ちゃん、自分ちでも着物なの?」
「他の格好を見せるのが恥ずかしいのよ」
着慣れている由美子にはなんでもないことなのだ。由美子は苦笑した。自分にではなく、朱鷺が的はずれな話しばかりするから。