朱鷺
そんな遊びに行く金も無いのに、朱鷺は友達に誘われた。金が無いから行けないとは言えない。腹が痛いとでも言ってやろうかと、考えていたら相手は、パチンコで大勝ちしたんだ、おごってやる!と上機嫌だった。朱鷺は、あさましいかな?と思いつつ、安心してついて行った。

 なじみの店を回る。あ~ら朱鷺ちゃん何してたのよぉ~久しぶりじゃない、行く先々で言われる。久しぶりに、気兼ねの無い連中としゃべるのは楽しい。かわいい新人従業員も見られた。
 明日は休みだ、機嫌良く酔って、ぶらつく。
 雑貨屋によって、本買って帰るか?おかずかよ、ああ、おまえは専属がいたよな、うらやましいもんだ、そんなんじゃねーよ、からかいからかわれ、狭いけど、自分を隠さなくていい町を歩く。
 あれ?こんな所にホテルあったかな?路地に、ビジネスホテルの看板が小さく明るい。
朱鷺は何気なしに、入り口に目をやった。ん?なんかおっさんと若いのが出てくる。目を合わせたくないな、とそらしかけた時。 彼は目を見開いた。
 出てきた若いのは、薫だった。


 朱鷺は、連れに断りもせず、猛然と薫の腕をおっさんから引きはがし、町のはずれの公園へ引きずって行った。残された連れは、あ~あ、と同情の声を出して彼らを見送った。

 
 「おまえ、何やってんだよ!」
大きくなんかない公園で、朱鷺の声が響き渡る。さすがに現行犯の薫は顔をひきつらせている。
 「なんで、こんなことするんだよ!」
きっと知っている誰かに聞かれる、朱鷺は想像がついたけど、止まらなかった。
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