60代の少女
アトリエの錠前をかけたことを確認すると、何日か前も歩いた道を、再び2人でなぞっていった。
「―――あ、そうだ・・・これ」
ふと、思い出したものがあって、元博は鞄を探る。
取り出したのは、先日いちに貰った弁当の空箱と包みだった。
校内でもいつ会えるのか判らないし、連絡先も知らないという状況で、とりあえず会えたときに返そうと思い、持ち歩いていた。
「うまかったよ、ありがとう」
「・・・良かった。お礼なのに、口に合わなかったらどうしようかと思ってた」
安堵した表情のいちが、それを受け取る。
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