60代の少女
少女は、手渡された本と元博を交互に見る。大きな目に瞬間的に捉えられて、元博は少々戸惑った。
やがて少女は本の中から、貸し出しカードを取り出した。
「・・・いえ、聞かないでおきます」
「・・・あら?気にならないの?」
「そりゃ、気になりますけど・・・」
貸し出しカードに記入が終わった彼女は、それを江梨子に差し出した。
「でも推理小説の犯人をばらされたら、誰だって怒るでしょ?それと同じです」
「・・・なるほど・・・」
江梨子は頷きながら、そのカードに返却日の印を押す。
「・・・ねえ?臼井元博―――さん?」
少女―――田崎いちは、元博の顔を覗きこみながら、笑った。
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