パセリな彼女がついた嘘
僕の中に天使と悪魔がいたとしたら、
天使は9回の裏、ツーアウト満塁の危機を迎えていた。

抑えのエースを投入するも、
連打を浴び、たちまちに塁は埋まっていた。

「普段若い子に興味は沸かないんだけど、
私あなたにのことけっこう好きかも」

なんて同じ年の僕にむかって言う亜里沙が、
汗をかいた細いグラスを傾けると、
カランと氷が音を立ててその中身の空を知らせる。

終電を当に逃した出会って1週間後の金曜の夜、
僕と亜里沙はこの日二軒目のバーで、
何杯目かのお酒を飲み干していた。

「もう一杯飲んだら、行こうか」

敢えて【どこに】とは言わない僕のその心は、
4度目の罪を犯すか否かの決着が未だついていないことに由来する。
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