パセリな彼女がついた嘘
「おつかれー」

と言って須藤は2杯目、
僕は1杯目のビールで乾杯をした。

僕は泡を多く含んだ1口目を飲み込んで彼に聞いた。

「なになにまたコンパ帰り?」

「違いますー異業種交流会ですー」

大学時代サークルでは毎年新入生を誰よりも多く集め、
会社では昨年営業部門で新人賞を取ったというから、
この男に口では到底太刀打ちできない。

言葉のファンタジスタと僕は形容する。

「俺もそろそろ転職を考えててさ
仲のいい取引先のベンチャー社長主催の
パーティだったわけ」

2年目で転職と言う彼の発言は、
この国の終身雇用と言う制度が、
もう決して若者たちの美徳ではないことを物語る。

「俺はコピーライターになりたいわけ、何が悲しくて
フリーペーパーの店舗営業をしてるのかと思うね」

「野球部に入ったって、ボールに触れるまで半年、
2年まではボール拾いがほとんどだって言うじゃない」

「だからー、
アメリカでは10歳だって大学に行けるんだよ、
能力がある人間に下済みは必要皆無だね」
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