ギア・ドール
「え?・・・おや、海人と菫じゃねぇか?どうしたんだ?こんなところで?」


 皐月や菫のギア以上に低速で前に進んでいたジンのギアは、皐月と同じように寸胴な胴体をしているが、大きさは7メートルと皐月の菫のギアとの中間ぐらい。淡い灰色に近い黒をベースカラーとしており、夜ともなると視覚ではまず捕らえることのできないつくりになっていた。


 皐月も菫のギアも、決してステルス加工をしているわけではないので、5キロ先から索敵反応が出るはずなのだが、ジン爺さんの言い方は、まるでたった今気が付いたかのようだ。


「どうしたやない!ステルス加工取っとけと言うたろう?危なっかしい。」


 ジン爺さんのギアに追いつくと、海人と菫は彼のスピードに合わせて若干スピードを落とす。


 とりあえず、ジン爺さんの質問は無視だ。


「なんだ?突然怒鳴り出して?あの日か?」


 そんな下らない冗談には、笑う気も起こらない


「人の話はまじめに聞けや。もう一度、怒鳴られたいんか?」


 思わず、皐月の腰に装備されているマシンガンに手をかける。


 威嚇と作業用のマシンガン。


 殺傷能力はあるが、2~3発ギアに撃ったところで、軽い傷を付けるのが精一杯の威力しかない。


「まったく、またその話かよ?うるせえな・・・。前にも話をしただろう?俺のマグルは30年前に生産中止になった虎神軍のスパイ任務専用機『ラスト』の流用機なんだぜ。今じゃ、数千万出したって手に入らない代物よ!それをお前、大事なステルス加工を取っちまったら、そこの二機みたいに量産期の劣化品と同じ価値しか出ないじゃねぇか!馬鹿か?」


 熱弁するジン爺さん。


 正直、海人も菫も、ギアなんて動けばいいと思っているような人だから、ジン爺さんの言葉を理解することはできなかった。


 そもそも、海人は「ラスト」なんて名前をしたギアを知らない。


 と言うより、30年前のギアって・・・・・・

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