ギア・ドール

 両側に分かれて開く自動ドアをくぐり、私を襲うのは、格納庫独特の金属の臭いと、整備兵たちの喧騒。


 いつもは壊す対象でしかない、敵軍のギア・ドールや戦闘機が並ぶ格納庫はとても新鮮な光景だったが、見学に浸る余裕はない。


 男の軍服を着ていることで、色んな人に声をかけられるコトを、器用な言い訳で交わしながら、私が向かうのは、格納庫内の最奥。「top secret」と書かれた扉。


 右隣に台座が置いてあり、その上にはノートパソコンが置いてある。


 モニターに映る画面には「please password」の文字。


 パスワードキーの扉を急ピッチで作ったのだろう。


 兵器に大量の予算を割いていると、あまり襲われる心配のない基地内のセキュリティは案外こんな形になりやすい。


 予想以上に簡易なセキュリティだ。


 幸い、緊急事態のため見張りもない。


 私は素早くパソコンのキーボードをいじると、先日闇ルートで手に入れたパスワードを入力する。


 後は、この一週間でパスワードが変わっていないことを祈るのみ。


 緊張から、背中に冷たい汗が流れる。ここでエラーが出れば、私に打つ手はない・・・。


「・・・・。」


 待つこと数秒。


 画面が一瞬消えたかと思うと、ブザーと共に赤文字で「OK」と出る。


 瞬間、右にスライドするトップシークレットの扉。


 無事に開いた安堵感よりも、恐怖と気合から武者震いが起こった。


 レベッタの弾数は、二丁で30発。


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