ギア・ドール
　喚声と騒音がこだまする格納庫の中で、白いギア・ドール、弁財天は足の高速具を力いっぱい剥ぎ取り、歩き出す。


　自分に取り付いていた整備士たちを振り払い、向かう先は･･････


　･････入り口に立つ自分･･････。


「鈴蘭？」


　思わず、声に出る。


　正直、うれしかったのだ。こんな状態になってでも、自分のことが分かってくれる鈴蘭が。


　････『大丈夫。俺が守るから･･･。』


　二年前に言ってくれた彼の言葉が、私の中でよみがえる。


　彼はやっぱり、この中で生きてる･･･。


　そう、確信した瞬間。


「貴様!!どうしてこんな場所にいる!?」


　銃声と共に、年配の男の声の怒鳴り声が響いた。


　瞬間、私の頬をかすめる一発の弾丸。


　頬が擦り切れ、赤い筋ができた。


　銃声がした方向に顔を向けると、そこに見えたのは、真っ赤な顔をした将校。


　階級章から、大将であることが分かる。


　彼の一声で、格納庫内の兵士たちの視線が私のところに集まった。


「脱走兵だ!!あいつを撃ち殺せ!!」


　最初は、きょとんとしていた兵士だったが、大将の掛け声により、兵士たちの動きが変わる。


「え？」


「誰が？」


　迷う声が聞こえてくる中、私に一発の弾丸が飛んでくる。


　早い理解をする兵士は、この場合は厄介な敵だ。


　もう、鈴蘭が自分に向かってくることに対して感動している場合ではない。

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