ギア・ドール

「くっ!」


 私は、うまく足もとに着弾した弾丸を避けると、一目散に動き出した鈴蘭の元へ向かう。


 死への恐怖から、震える足を何とかして、鈴蘭へ向けて全力疾走。


 それで、ようやく理解した兵士たちが徐々に動き出す。


「あいつだ!?」


「あれは、キラか?」


「捕虜がここに侵入したぞ!」


「何が起こった?説明しろ。」


「弁財天、動き止りません!!」


「捕虜の確保なんて後にしろ!今は弁財天を止めるんだ!」


 様々な声が交差する中、私へ向けて数発の弾丸が飛んでくる。


 そのうちの一発が、私の肩を打ち抜き疾走速度が落ちるが、止まるわけには行かない。


 鈴蘭!!今行く!!


 妄執にも似た愛情。


 地面に血痕を作りながら、私は鈴蘭に向けて一目散に走る。


「弁財天、暴走!強制停止、拒絶されました!」


「いいから、捕虜を捕らえろ!!」


「どこに捕虜がいる?」


 様々な声と銃弾が格納庫内に響き渡る。


 混乱する紫卯基地秘密格納庫。


 自分にとっては好都合。


 混乱した兵士が自分に致命傷を与えることなんて、できない。


 私は、流血した肩を抑えながら、弁財天の元へ向かう。


 残り10メートル。


 9・・・8・・・7・・6・・・・・・・・・・

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