ギア・ドール

 目をつぶる私。


 そして、3発の銃弾が私の身体を貫く・・・・・


 ・・・・・・・・・ハズだった。


「え?」


 しかし、銃弾はいつまでも私の元に届くことはなく、代わりに私の耳には金属がぶつかる甲高い音と、銃弾が床に落ちる音が鳴り響いた。


 恐る恐る目を開けてみる・・・。


 そこに映ったのは、純白の巨大な金属の指。


 弁財天の指だと理解するのに、そんなに時間はかからなかった。


 弁財天の両手が、とっさに私を包み込んだのだ。


「・・・鈴蘭・・・・?」


 その行動に、思わず感動で瞳から涙が零れ落ちそうになる。


 うれしかった。


 たとえ、どんな形になっても、彼は・・・・彼はまだ生きている・・・・・。


 生きて、私を守ってくれる・・・。


 機械音と発砲音が響く中で、弁財天が私をすくい上げる。


 マシンガンも、ピストルも、所詮は対人間兵器。


 全身を金属で包んだギア・ドール相手ではびくともしない。


 弾丸の雨から私を守るように、弁財天と化した鈴蘭は私を両手で包み込むと、バーニアをふかして宙に浮く。


 整備兵の喚声が格納庫内で響いたのが、両手に包まれながらも分かった。

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