西の狼
「…そう言えば、聖堂の方はいいのですか?最近は戻っていないのでしょう?」

「…私が居なくとも、神父達だけで十分でしょう。」

「何をおっしゃいますか。大司祭様がいなくては孤児院の経営も危ういのです。皆も、大司祭様に会いたがっていますよ。」

「そうですよ。今だけでも、お戻りになってはいかがですか?」

「…分かりました。」

「では、参りましょうか。皆が聞いたら喜びますよ。」

二人は肩を並べて部屋から出て行った。

「…これから、この国はどうなるのでしょうか…」

女王の独白に応える声は、無かった。






シルフィードとディアルド神父は共に公国の北東地区に来ていた。ここには、光の女神であるアルカディアを奉るアルカディア聖堂区がある。シルフィードはこの聖堂区の大司祭を務めている。ディアルド神父は数人いる神父の中でも特に有力な一人だ。

「さぁ、参りましょう。大司祭様。」

「…あぁ…」

ディアルド神父が聖堂の扉を開けると中ではパイプオルガンの音な合わせて聖歌が歌われていた。するとその中の一人がシルフィードとディアルド神父に気付いた。

「大司祭様!神父様!」

その一人の言葉につられて皆が二人に注目した。

「まぁ、大司祭様。良くお戻り下さいました…皆も、待っていたのですよ?」

「…そうか…変わりないか?」

「はい。今も、皆で聖歌を歌っていたところでして…」

すると歌っていた子供の一人が意見を述べた。

「カリア神父様!今日は大司祭様のお話が聞きたいです!」

「そうねぇ…じゃあ、そうしましょうか。大司祭様も、宜しいですか?」

「…あぁ。こんな私の話で良ければ…幾らでもしてあげよう。」

シルフィードがそう言うと子供達が喜びながら椅子を出して自由に座った。シルフィードは子供達が開けた真ん中の席に座った。シルフィードは、日が暮れるまで子供達にいろんな話を聞かせた。
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