西の狼
「…ありがとうございます、ランスリッター卿。では、クローガイン卿。説明をお願いします。」

「はっ。」

三人は立ち上がってシルフィードの話を聞いた。

「斥候の報告によれば、帝国軍は北東のバリアルド山脈を通って来ている。程なく山脈を超えて来るはずだ。そこを、アルバートの飛竜騎士団に襲撃して頂きたい。」

シルフィードはアルバートに言った。

「分かりました。では、私は騎士団の準備をしに行きます。それでは、陛下…」

「えぇ。お願いします。」

アルバートはマントを翻して部屋を出て行った。

「…しかし、ガラルド…貴公は、まだ陛下を殿下とお呼びになる癖が抜けていない様だな。」

「ん、あぁ…分かっちゃいるんだがなぁ…中々…」

ガラルドは恥ずかしそうに頭をかいた。

「…なるべく、早く直して欲しいものだな。今は陛下が公国を支える要なのだから…」

「あぁ。分かってるよ。」

「…そろそろ、お戻りになられてはいかがですか?」

そう言ったのは、女王だった。

「…では、俺はこれで…今日も陛下の名の下に公国に平穏が訪れんことを…」

「ありがとうございます、ブラーニング卿…貴方にも、永久の変わらぬ平穏が訪れんことを…」

ガラルドはそう言って部屋から出て行った。
「貴公は行かぬのか?」
シェルフィードはアイナに尋ねた。

「あぁ。私は王族親衛隊隊長だしな。家のことは紅薔薇騎士団に任せてある。」

「そうか。では、陛下。私はこれで…」

「えぇ。ご苦労様でした。」

シェルフィードは静かに部屋から出て行った。

「…貴方は、今回のことをどう考えていますか?」

女王はアイナにそっと尋ねた。

「…恐らく、今回も我が国の魔法鉱石が狙いなのでしょうが…」

「やはり、貴方もそう思いますか…」
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