西の狼
「…何か、感じたのですか?」

「いえ…ただ、本当に帝国の目的は魔法鉱石だけなのでしょうか…それならば、わざわざ侵略などせずとも、帝国の広大な領土内には、我が国に勝るとも劣らぬ量と質の魔法鉱石が採掘出来るはず…なのに、何故…」

「…他に、目的があると…?」

「…もしかしたら、そうなのかも知れません…」

「…では、正規軍を増員して警備を強化しましょう。」

「…お願いします。」

アイナは部屋を出て行った。

「…この国は、私を受け入れてくれるのでしょうか…父様、母様…私は…相応しく無いのでしょうか…」

その女王の呟きを聞いていたのは、ただ静寂に満たされた部屋だけだった。






「…何、姿を消した?」
ガラルドは王宮を出て家に戻って来た。息子の誕生日の途中だったからだ。しかし帰ってみるとその息子が姿を消したというのだ。

「…まぁ、怒らせちまっただろうしなぁ…仕方ねぇか…俺が探して来る。お前達は準備をしておいてくれ。」

その命令に部下達は首をかしげている。

「…帰って来たら、誕生日パーティーの続きだ。」

ガラルドはそう言って息子を探しに出かけた。後に残された部下達は我先にとパーティーの準備にかかった。







「…はぁ…」

まだ日が昇り切っていない頃、街を見下ろせる丘の上の木の下に、一人の人影が座り込んでいた。その髪は美しい銀色の短髪で、太陽の光を反射して美しく輝いている。街を見下ろすその両目は、澄んだ蒼色をしている。顔立ちは、整った中にもまだ幼さが垣間見える。その脇には純白の狼が並んでいる。その毛並みは良く手入れされていて、とても美しい。その燃える様に紅い両目は溜め息を漏らした人影を見上げている。

「どうした、レオン?」
「…いや、お父様は僕のことが嫌いなんだ…きっと今頃は他の四大卿とお茶会でもしてるんだよ…」
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