5年先のラブストーリー-この世のしるし-
ところが、直子の加減のない行動に恵子の体はピクリとも動かなかった。
一瞬で目が覚めた直樹は冷静さを欠き、直子以上に体を揺すった。
その時、直子の方が全くと言っていい程、冷静だった。
「ビーボービーボー」
その声にようやく落ち着いた直樹は恵子の胸に手をあて心臓の鼓動を確認した。
直ぐ様、救急車で運ばれた恵子は車中でも意識が戻らず、昏睡状態が続いた。
直樹と直子は恵子の手を握り締め、必死になって無事を祈り声をかけ続けた。
その時二人の声が届いたのか恵子の体が反応した
すると体から一気に汗が吹き出し苦しみ始めた。
恵子の握り返す力は異常なまでに強く、直樹の手の甲からは恵子の爪により血が滲み出していた。
この時、直樹は病が恵子の体をどれだけ蝕んでいるのかを悟った。