5年先のラブストーリー-この世のしるし-
恵子は自分をごまかして直樹と接しようとしていた。
また、直樹もそこまでする恵子の気持ちを受け止めるしか出来なかった。
病の進行の大きさは二人が一番分かっていた。
だから二人は、あえてそれに触れようとはしなかった。
「今日の恵子の異変を直子が気づいて俺に知らせてくれたんだ」
「いつまでも子供だと思っていたけど、直子が生まれて来る時にあなたが描いた絵のように歩み出してくれたのね」
二人は娘・直子の成長に喜びを感じ合っていた。
「あなたとこうしていると高校の時を思い出すな」
「話すのはやめて、ゆっくり休んだらどうだ」
直樹は、その頃の話しになると急に黙り込もうとした。
それでも恵子は考えがあって、あえて話し続けた
「あなたは私と出逢った時の事を覚えている?」